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第21話 300万の価値③

Auteur: 花柳響
last update Dernière mise à jour: 2026-01-15 18:00:13

 本邸。

 その言葉の響きに、胃の腑が冷たくなるのを感じた。

「ほ、本邸って……ご実家、ですか?」

「ああ。祖母上がお呼びだ」

「祖母……?」

「九龍華枝。九龍家の当主であり、あの一族の絶対権力者だ。……今回の騒ぎを見て、孫の選んだ『女』を値踏みしたくなったらしい」

 さらりと言われた内容に、血の気が引いていく。

 九龍家の当主。絶対権力者。

 そんなラスボスみたいな人のもとへ、予行演習もなしに連れて行かれるというのか。

「ちょ、ちょっと待ってください! 私、まだ心の準備が……! 服だって、こんな普通のワンピースですし!」

「構わん。君はそのままで十分に美しい」

 湊はようやくタブレットを閉じ、私の方を向いた。

 美しいと褒めているはずなのに、その目はどこか面白がっているように見える。

「それに、向こうが求めているのは『品格』や『家柄』じゃない。僕が選んだ女が、どれほど扱いやすい『人形』かを見たいだけだ」

「人形……」

「安心しろ。君はただ、僕の隣で笑っていればいい。……僕の『所有物』としてな」

 湊の手が、するりと伸びてきた。

 腰に回された大きな掌が、熱を帯びて私の肌に触れる。

「ひゃ……っ」

 スーツの生地越しだというのに、彼の体温が焼きごてのように伝わってくる。

 彼は私の腰を強引に引き寄せ、自分の身体に密着させた。硬い筋肉の感触が、二の腕に食い込む。

「いいか、朱里。あそこは伏魔殿だ。一歩入れば、味方は僕しかいない。……食い殺されたくなければ、僕から離れるな」

 耳元で囁かれる、低く甘い警告。

 吐息が耳にかかり、背筋が震える。私は自分の置かれた状況を改めて理解させられた。

 私は、この危険な男の「盾」として、敵だらけの戦場に放り込まれるのだ。

 車窓を流れる景色が、無機質な都心のビル
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